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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
この鏡は銘を〝散(ちる)紅葉(もみじ)〟という。泉水の今は亡き母貴美子が姫の生誕をたいそう歓んで、守り鏡として細工師に作らせたものだ。十一月生まれの泉水には紅葉がふさわしいと、これも自ら紅葉の柄を描くようにと注文したそうだ。
貴美子は京都のれきとした公卿権中納言藤原家の出身である。柳のようにたおやかな佳人であったというが、泉水には母の記憶は殆ど残っていない。生来病弱であった母は、泉水を生んでからというもの、更に衰弱した。
貴美子は京都のれきとした公卿権中納言藤原家の出身である。柳のようにたおやかな佳人であったというが、泉水には母の記憶は殆ど残っていない。生来病弱であった母は、泉水を生んでからというもの、更に衰弱した。