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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
元々、心ノ臓が弱く、発作を繰り返していたのだ。そんな母であってみれば、自ら乳を含ますこともなく、泉水は生まれ落ちてすぐ、乳母の時橋の手に委ねられた。泉水誕生の後、母は殆ど寝たきりの状態になり、泉水が五歳のときに亡くなった。
その時、母はまだ二十五歳であった。
ゆえに、母の腕に抱かれて思いきり甘えたという想い出の一つもない。
むろん、そのことで母を恨めしく思ったことはない。むしろ、生命を賭けて自分を生んでくれたことを心から感謝している。
その時、母はまだ二十五歳であった。
ゆえに、母の腕に抱かれて思いきり甘えたという想い出の一つもない。
むろん、そのことで母を恨めしく思ったことはない。むしろ、生命を賭けて自分を生んでくれたことを心から感謝している。