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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 太陽が山の端に姿を消し、周囲が夜の闇に呑み込まれる頃になって、篤次は名残を惜しむかのように幾度も振り返りながら帰っていった。この時、篤次は何故か、嫌な胸騒ぎがしてならなかった。銀杏の樹の下に立って、ずっと手を振り続ける泉水の姿がひどく頼りなく見えた。
―このまま帰りたくない。
 そんな想いがよぎったが、できるはずもないことであり、また、してはならないことでもあった。
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