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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 その時、コトリと小さな物音が響いた。泉水はハッと我に返り、音のした方を見る。湯気を逃すために、明かり取りの小窓を開けていて、どうやら物音はそこから聞こえてきたらしい。弾かれたように面を上げて様子を窺うと、小窓の向こうに覗いた男の貌が映じた。
「―!」
 泉水は烈しい衝撃と恐怖のあまり、小さな声を上げた。
「あ―、あ」
 あまりの怖ろしさに、声さえ出ない。
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