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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 泰雅があらゆる陵辱の限りを尽くして、出ていったのは早朝の、まだ夜明け前のことであった。
―次は必ず江戸に連れて帰る。逃げようなどとは思うな。
 ぐったりと横たわる泉水の耳許で囁いた。
 〝また、来る〟とそっけなく言い捨てると、ひらりと馬にまたがり、朝靄の立ち込める中を走り去っていった。馬はどうやら、銀杏の樹の下に繋いでいたらしい。
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