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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
それでも、伊左久も光照も口を揃えて泉水に水汲みに行かないようにと言い渡した。折角五ヶ月まで育った腹の子が流れでもしたら一大事だと言い張る。二人ともいささか過保護すぎるほど泉水を大切に扱う。その心遣いが泉水には涙が出るほど嬉しい。
泉水にとっては赤の他人である二人が、何故かとても近しい間柄の人のように思えてならないのだった。ゆえに、急いで庭を掃いてしまうと、二人の眼をこっそりと盗んで出てきたのだ。