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第4章 《参の巻―囚われた蝶―》

「祐次郎というのは、一体どこのどいつなんだ？　そなたは昨夜もその名を呼んだが」
　泉水は息を呑んだ。まさかこの場で祐次郎の名が泰雅の口から出るとは思いもしなかったのだ。
　今度は泉水が考えつつ、応える番であった。
「許婚者です」
　短い沈黙が落ちた。
　泉水は、静かな眼で泰雅を見つめた。
　泰雅はしばらく眼を閉じて、何かの想いに浸っているようであった。