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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
 眼下には、山道がつづら折りになって延々と続いている。山道に沿って生い茂る山桜の樹の花は殆どが散り、代わりに萌葱色の若葉が燃え立つようであった。泉水は抜け殻になり果てたかのような虚ろな心でその光景を眺めた。
 一陣の風が吹き渡る。気紛れな春の風は、わずかに散り残っていた花びらを巻き上げ、散らしてゆく。
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