この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
泉水は夢中で走った。裸足のままであることも厭わず庭に走り降り、庭のあちこちを探し回った。しかし、狭い庭は探す手間も必要なく、ほどなく時橋は見つかった。
「時橋―ィ」
泉水の絶叫が夜の静寂をつんざく。その声で、伊左久が物置小屋から飛び出してくる。伊左久は庭の片隅の小さな小屋で起居しているのだ。女ばかりの尼寺に、男が共に起き伏しするのを遠慮してのことであった。伊左久も眠っていたはずで、寝間着代わりの着古した作務衣姿であった。
「時橋―ィ」
泉水の絶叫が夜の静寂をつんざく。その声で、伊左久が物置小屋から飛び出してくる。伊左久は庭の片隅の小さな小屋で起居しているのだ。女ばかりの尼寺に、男が共に起き伏しするのを遠慮してのことであった。伊左久も眠っていたはずで、寝間着代わりの着古した作務衣姿であった。