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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
そして、泉水を救えなかった自分に責任を感じ、生命を絶つ気になったに相違ない。
―私が時橋を殺したのようなものではないか。
泉水は悲嘆の底に沈んだ。いや、泉水を苛んだのは哀しみばかりではなかった。自分が我が儘を通したばかりに、大切な母とも呼べるべき人を死なせてしまったのだ。苦い悔恨が泉水をがんじがらめにした。
果たして、仏門に入ったことは正しかったのだろうか。ただ己れの苦しみから逃れたい一心で尼となり、その挙げ句、時橋は死んだ。
―私が時橋を殺したのようなものではないか。
泉水は悲嘆の底に沈んだ。いや、泉水を苛んだのは哀しみばかりではなかった。自分が我が儘を通したばかりに、大切な母とも呼べるべき人を死なせてしまったのだ。苦い悔恨が泉水をがんじがらめにした。
果たして、仏門に入ったことは正しかったのだろうか。ただ己れの苦しみから逃れたい一心で尼となり、その挙げ句、時橋は死んだ。