この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
どれくらいの間、そうやっていたのか。実際には、たいした刻ではなかっただろう。泉水はのろのろと身体を起こし、立ち上がる。
衣に付いた泥を片手で無造作に軽く払った。この屋敷に連れてこられてから数日になるが、泉水はいまだに法衣を身に纏っている。つまり、尼姿のままであった。また現実として、泉水はまだ僧籍に入ったままの身であり、〝蓮照尼〟であった。
その間、泰雅の訪れは一度としてない。それだけが、せめてもの救いではあった。
衣に付いた泥を片手で無造作に軽く払った。この屋敷に連れてこられてから数日になるが、泉水はいまだに法衣を身に纏っている。つまり、尼姿のままであった。また現実として、泉水はまだ僧籍に入ったままの身であり、〝蓮照尼〟であった。
その間、泰雅の訪れは一度としてない。それだけが、せめてもの救いではあった。