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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第49章 《巻の弐―哀しみの果て―》
だが、泰雅は泉水の大切な男を奪った。それも、これ以上はないというほど残酷、卑怯なやり方で。
黎次郎のことを思えば、決意は揺らぐ。だが、その反面、兵庫之助の死を知ったときの心の痛みは日に何度も泉水の中で蘇る。愛する男への哀惜の念と我が子への情愛の狭間で、泉水の心は烈しく揺れた。今も先刻の黎次郎の泣き顔が瞼にちらつく。
が、泉水は烈しく首を振る。愛する男を理不尽にも奪われたときの口惜しさ、やるせない憤りを思い出そうとした。
黎次郎のことを思えば、決意は揺らぐ。だが、その反面、兵庫之助の死を知ったときの心の痛みは日に何度も泉水の中で蘇る。愛する男への哀惜の念と我が子への情愛の狭間で、泉水の心は烈しく揺れた。今も先刻の黎次郎の泣き顔が瞼にちらつく。
が、泉水は烈しく首を振る。愛する男を理不尽にも奪われたときの口惜しさ、やるせない憤りを思い出そうとした。