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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第50章 《巻の参―臥待月の夜―》
 盃を重ねる割には、まだ、たいした酒量を呑んでもいないのに、早くも酒に酔いしれたような酩酊感が彼を支配していた。
 彼を酔わせているのは他ならぬ魔性の美貌を持つ女の艶やかさであった。そう、今宵の月のように禍々しいほどの美しさを持つ、魔を秘めた女の魅力に、泰雅は絡め取られてしまっている。
「確かに、今宵の月は美しい、この世のものとは思えぬほどだ」
 泰雅は掠れた声で呟いた。
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