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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第50章 《巻の参―臥待月の夜―》
 泰雅は無防備なほど深い眠りに落ちている。やるなら、今だ、今、この瞬間しかない。
 そう、思った。
 かつて母とも慕った乳母時橋の形見の懐剣を握りしめる。スと鞘から抜くと、行灯のほのかな灯りを受けて、懐剣が一瞬眩しく眼を射た。
「お生命、頂戴致します」
 低い声で囁くと、懐剣を力いっぱい振り上げた。
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