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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第50章 《巻の参―臥待月の夜―》
「私には―できませぬ」
 懐剣を持つ泉水の手が震え、ポトリと音を立てて落ちる。
「お許し下さいませ」
 泉水はそう言うと、頭を下げ、逃げるように寝所を出た。
 何に対しての詫びの言葉であったのかは判らない。泰雅を殺そうとしたことか、それとも、死を宣告されるほどに重い病であるにも拘わらず、気付かなかった迂闊さか。
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