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第57章 《壱》

　いや、刻を経る毎に募ってゆく想いとは別に、あの女の笑顔は不思議と人の心を温かくする。ふんわりとした笑みを思い返せば、ぽっと心に小さな灯りが点ったようになり、ほんのりと心が温かくなる。―不思議な女だった。いつもひっそりと、あたかもその場にいるかどうかさえも判らないほどの静謐さを身に纏いながら、一度相対した者の心を強く捉えて離さない、そんな存在感がある。