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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第57章 《壱》
 親方は当時、江戸でも腕の良いと評判であった達蔵という男で、少々変わり者の頑固な男として知られていた。だが、言われているほどの偏屈者でも狭量な男でもなく、実子のいない達蔵は維助を実の倅のように可愛がり、みっちりと仕込んでくれた。
 変わり者の達蔵は維助の他にも二人の若い弟子を抱えていたが、住み込みであったのは維助だけで、後の二人は通いの身であった。達蔵には、おみのという女房がいて、この女がまた、達蔵とは似ても似つかぬ愛想の良い、面倒見の良い女であった。
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