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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第58章 《弐》
思わずぎくりとして、おせんの方を窺い見る。年上の美貌の女の眼は遠く、まなざしは確かに維助の方に向けられているのに、維助なぞ見てはおらず、どこか遠くをさまよっているようだ。
そう、この眼は二日前の夜、泣きじゃくるお征を宥めるために、亡くなった亭主のことを語っていたときの遠いまなざしと同じだ。
スウと、維助の顔から血が引いてゆく。
それでも、言わずにはおれなかった。
「おせんさんのご亭主はもう大分前に亡くなられたと聞いたが」