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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第60章 《其の壱》
 常磐井というのは、弥子の母の女房名である。そう諭した時、普段は〝時橋〟と呼ぶ貴美子が昔のように〝弥子〟と呼びかけたことが弥子の心に滲みた。
 貴美子は心優しい女性だ。自分一人の我が儘のために、誰かを犠牲にしても良いという考え方などできるはずがない。
 弥子は後ろ髪を引かれる想いで、槙野の屋敷を下がり、嗣道の妻となった。
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