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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
 灰色に塗り込められた庭の中で、花のある場所だけが眩しい。泉水は眼を細めて、雨に濡れる花を見つめた。
「泉水」
 降りしきる雨の音に、深みのある声が静かに響く。
 泉水はゆっくりと振り向いた。
 突如として眼の前に差し出されたのは、一輪の紫陽花であった。榊原の屋敷の中庭に咲いている紫陽花に違いない。かすかに色づいた慎ましやかな蒼色に見憶えがある。
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