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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
男は秋月の胸倉を掴むと、いきなりその顎を蹴り上げた。相手の一瞬を突いた見事な鮮やかさである。弾みで秋月が泉水から手を放し、泉水は地面に投げ出される。その拍子に腰を打ち、鈍い痛みが走った。
「貴様、いずこの家中の者だ」
秋月が甲走った声を上げた。怒りのあまり、額に青筋が浮かんでいる。
突如として出現した男が肩をすくめて見せる。
「女の前で格好つけるわけじゃねえが、名乗るほどの名前は持ち合わせちゃいねえよ」