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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
私にとってあの人は長い間引っかかっていて…

思い遂げた必要悪。

あれほど貪欲に、貪るように欲してくれる飼い馴らせない野獣。

いつまで…

どこまで…

続けられるかわからないけど、

でも、今、私は強引に、貪欲に求められたい。

望まれたい。

欲されたい。

ただこの底の見えない快楽をただ貪り尽したい。


それはこれからしばらくは一人で生きていくために、

この10年で失い傷つけられたおんなとしての自信を…

取り戻すため。


それさえ手に入るなら、そのほかの事は、

しばらくはどうでもいい。そう…

こんな愚かな自分の姿を、できるだけ見ないことにしている。


でもあの人にとって私は何者なのだろうか?

果たしてどういう存在なのだろうか?

いつまで…

こんなことを続けてくれるのだろうか?


「んんっ」

うなじの愛撫に反応して嬌声がこぼれる。

そこは敏感なところ…

丁寧に撫でまわされると、意識が飛びそうになる。

ここが感じるのは、そこを撫で唇を寄せるのが好きだった男に

執拗に責め続けられたからだろう。

私の躰に遺された最初の男の置き土産。

これからもうなじの愛撫を受けるたびに

私はその男を思い出すのかもしれない…
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