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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
印刷室に向かいながら、クリップで留めてある紙をばらした。

入室するなりコピー機にまっすぐ向かい、紙束をセットする。

朝早いからなのか、いつもは誰かいるのにその時は私一人だった。


静まり返った部屋の中で、5とスタートボタンを押すと、

しばらくは機械が仕事をしてくれる。

ガチャンガチャンという単調な音を聞きながら、

つい週末の夜のことが頭をよぎった。


あの後、結局足に押し付けられたアンクレットの鎖を引きちぎって、

テーブルに投げ捨て、暗いうちに家に戻った。


あの人は突然あんなものを私に押し付けたりして、

一体どうしたかったのだろう?


この関係は決して表に出せるはずもない。

お互いに所有権なんてない。あの人は所詮は人のモノ。

奥様のいるとわかりながら堕ちた淫欲の地獄。

それがいけないことだとわかっていたからこそ、

だからこそ長い間踏みとどまっていたはずなのに…

それでも結局止められなかった。


最初こそ私があの人の家に飛び込んでいったものの、

その後関係が続くようになってからは、細心の注意を払い会っていたし、

メールですら、最低限の内容で送受信した次の瞬間

内容も履歴すら削除するようにしていた。


密やかに隠れるように交わる情事なのに、

まるでお互いの関係を匂わせる証拠を残すような危険を冒すなんて…
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