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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
チェーンの所々に小さな白い真珠のような玉を挟むシンプルなデザイン。

こんなものを…

いつ、どこで…

どんな顔をしながら選んで、買ったのだろうか?


男に、アンクレットなんてもらったことはなかった。

月並みな指輪や、アクセサリーはあってもそんなもの…


単調で大きな機械の音が止まる。

私は目の前にできあがったほんのりと暖かい紙束を片手で持ち、

それぞれのページごとに縦横縦横の順に積む。

わけながら自然と内容に目が行った。

やっぱりさすが仕事の鬼で出世頭と言われるあの人…

どれも見易い。


自分の仕事の参考にもなる資料だから、

いつの間にか食い入るように見ていた。


ふつう課長にもなったら、こういうことは部下に任せるのだが

今回は相手先が古くからの付き合いで課長を指名してきたらしい。

規模も大きいのだろう。あの人自ら詳細まで手を入れている。


ふと、20ページがないことに気が付く…

そのまま慎重にページ数を追いながら順に積み上げていくが、

最後の一束が終わっても、そのページは出てこなかった。


どうしよう…

とりあえず積み上げた紙をそのままに、私は踵を返して歩き始めた。

ドアを開けようとノブを持った途端、

力を入れなくても自然にドアが開き誰かが部屋に入ってきた。
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