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そのキスの代償は……
第6章 その逢瀬
息を吸い込んだ。

でも大声にはならないように気を付けながら、

私は振り向きざま手に持ったものを投げつけながら

この前の夜言えなかったことを吐きかける。

ジャラ…

宙に舞うその様子を冷めた目で見ながら

「こんなものいらない!!!」


でも…

そう叫んだ私の視界に、あの人はもう映らなかった。


投げたものがむなしくドアに当たってズルズルと滑り、床に落ちた。

部屋は不気味なぐらい静まり返っている…


いつの間にいなくなってた?


「馬鹿じゃない…」

アハハハと乾いた嘲笑を漏らしながら、その床を穴が開くほど見つめた。

そこにあるのは、自分の醜い痴態の証。


あの夜、あれを押しつけられてから何度イッた?

濡れた唇で…

絡む舌で…

蠢く指で…

もちろんあの人自身の硬いモノで…

挿れられたまま腰を掌で上から下へ撫でられただけで、

どうしようもないほど震えながら息も絶え絶えに悶え乱れたのは誰?


縛られて躰と言葉で辱められながら、それに応じた躰。

でも一番嫌だったのはぞくぞくした自分の心…



戒められながら感じた快感が脳裏をかすめると、

素直な蜜口は、今でも…

甘い蜜を垂らし始める。
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