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そのキスの代償は……
第7章 その日
目から涙が溢れていた。

それをぬぐいながら、視界をはっきりさせようとあたりを見ると、

私は自室のベッドに独り寝ていた。


悲しいとかそういう感情ではない。

私に必要だったのはあの人の躰だったはずなのに、

いつの間に、躰だけならまだしも

こんなにも奥深い心の底まで搔き回されてしまったのだろう…

後悔の念と叶わない辛さが混じり合う。

10代の恋じゃあるまいし。

スタートから恋愛ですらなかったのに…

いつまで続くかもわからないのに…

それでもこんなに愛おしいと思う気持ちが止められない。

寂しげなあの人を癒してあげたい。

そして私もあの人の持っているであろう温もりに包まれたい。


やっぱりばかだ…

大人の割り切った戯れにこんな本気の重い気持ちを引きずって

持ち込んでしまっているのがばれたら…

あっという間に愛想を尽かされて、捨てられてしまう。

それだけは嫌だ。

今はまだその覚悟ができていない。


もう少しだけ見逃して…

もう少しだけ、もう少しだけ私にあの人を諦める時間をください。

今までだって神様なんているなんて思えなかった。

でも何かにすがって祈らずにはいられなかった…
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