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そのキスの代償は……
第7章 その日
フォーマルなドレスも扱っているブランドショップだった。

私には不釣り合いな場所。食事の前のはずなのに服?


あの人は、いつものように一瞬意地悪く右眉を上げたが、

それからその表情が氷が解けるように柔らかくなり、優しく微笑んだ。

その笑顔が、いつもと違うことに違和感を感じる…


「せっかくいいホテルに泊まったんだから

ドレスアップしてみないか?」

そう言いながら、あたりに並んでいるドレスを手に取り手招きをする。


「どうして?出張で来ているだけなのに…」

唐突な提案に困惑し、躰を引く私にあの人はもう一度微笑んで見せた。

「お前は本当に生真面目だな。

時にはこういう気分を味わってもばちは当たらないぞ」

あの人のそばにいつの間にか店員が近づいてきた。


「お客様。お連れ様にどのようなものを…」

「これから食事に行くので、ドレスを…」


店員はテキパキとあの人の希望を聞き、私を着せ替え人形のように扱う。

ドレスを試着してあの人の前に立つ。

こんな経験のない私は、もうどうしていいのかわからなくなり、

でも逆らうこともできず、

ただ頬を染めて言いなりになるしかなかった。


試着室を出るたびに満面の笑みを向けるあの人に…

つい、勘違いしそうになる。

でも、私は…

あなたにとって…

ただの…
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