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そのキスの代償は……
第7章 その日
「あら、まあ」

二人で食事をした店の入り口を出て、立ち去ろうとしたその時、

突然後ろから声をかけられた。

あの人は立ち止まって振り向き、その声の主を凝視してから…

目をこれでもかというくらい大きく見開いた。

この人は一体誰なんだろう?


「ふふふっ。どうしたの?口すらきけなくなった?」

女は含み笑いを浮かべながら辛辣な言葉を投げかけた。


「へぇ~」

私の頭から足の先まで品定めをするように舐めまわしてから、

もう一度あの人に視線を向ける。

その視線があまりにも冷たく屈辱的で、私は俯き小さくなるしかなかった。


「そういえば、研修なんですってね。まあ、会社のお金で…

相変わらずお気楽なご身分だこと」


あの人は女から視線をそらし、私に手を伸ばしてきた。

「そんなことない。失礼だぞ。

ここは自腹で、今は仕事の後のプライベートだ」


掌を絡め、私を背に隠してから一度強く握る。それから女と対峙した。

怒りを抑え冷静を装いながらも、言葉を選んでいるようだった。


「まぁ~、コワイコワイ。

仕事熱心なあなただから、もちろん研修には

きちんと来ているんでしょうけどねえ~」

言葉に含まれる侮蔑の色。


「こんなところで立ち話もなんだから、お茶はいかが?」

女は、有無も言わさない威圧的な態度でティールームをさし示した。
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