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そのキスの代償は……
第7章 その日
その時、ギャルソンがゆっくりとこちらに向かってやってきた…

あの人はそれに気が付き、メニューを手に持って、

こちらに向かってそれを差し出し、静かに話しかけてきた。


「相良は何に…「あなたに何がいいって聞いているんですけど?

答えないなら、勝手に頼むわね。

そこのあなた、ここにコーヒー3つちょうだい」」

女は強引に割り込んで会話をかぶせてから

ちょうどたどり着いたギャルソンに大声で注文をした。


この人はいったい…

それからも誰一人声を発することはなかった。

俯いた私と、何も言わないあの人。

あちらはどんな様子なのか、顔を上げることすらできないから

よくわからない…


そんな重苦しい空気を唐突に切り裂いたのは、奥様の辛辣な言葉だった。


「それにしても今度の新しいのはずいぶん昔のセンチメンタルな

思いを引きずったものなのね…

こんなにもあの人に似た女がこの世に…「ヤメロ!!!」」

あの人は突然テーブルをバンと叩いてその場に立ち上がり、

噛みつきそうな勢いで叫んだ。


その行為が、静かだった辺りの視線を一気に集め、私は益々小さくなる。

この女が、言いたいこともわからないし、

あの人がこんなに興奮する理由もわからない。


もう…

こんな場所にいたくない…

どこかに逃げ出したかった。
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