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そのキスの代償は……
第7章 その日
「別に…

どうせいつもの癖なんでしょ?

そのくらい取るに足らないようなことだもの。

私にとってもどうってことないから…」

「…」

「女との睦み遊びなんて、所詮人生のスパイス程度にしかならないって

お父さまも常々豪語しておられたから、

あなたもその程度にしか思ってないでしょ?」

「…」

あの人は何を言われても答えず、ただ眉根を寄せて黙っていた。


女は最初不思議な顔をしていたがその反応を目にすると

次第に震え始めた。

それなのにあの人は女から視線を逸らしたまま

ゆっくりと私の方を向き、女を無視し続けた。

その行為がテーブルの雲行きをどんどんあやしくしていく。


「ねえ、なんで?いつもなら、薄ら笑いを浮かべて

目の前で事もなげに切り捨てるのに、

どうして今回だけは何を言っても黙ってるの?」

徐々に興奮してきて、声を荒げ始めた女の様子は

先ほどと違って明らかに動揺していた。

それでもあの人は何も言わない。

張りつめた空気がピリピリと突き刺さる。

とうとう女は立ち上がって、罵声を浴びせ、まくしたてた。

「そんなつまらなそうな女…

どうせ乳繰り合うくらいしかできないんだから、

いくらでも遊んだらいいわ。

でもね、でも…

すでにあなたは私だけの物なんだから、

何があっても絶対に離してなんて…」
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