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そのキスの代償は……
第8章 その夜
こんなの夢どころか、悪夢だ。

いや、夫婦の修羅場に…

引きずり込んでしまった。


静かに慎ましやかに暮らしているだろうからこそ見せたかった夢を、

こんな醜態で終わらせてしまうなんて…

最悪だろ?


彼女との関係を切ることができなくなって最も恐れたことは…

俺のそばに「かおる」にそっくりな「ひな」がいる。

同じ部署で毎日会うような関係にあるという事実を…

あの女に知られることだ。


もう今は、最初の頃のその夜限り…

遊び半分の感覚じゃない。

浮気なのか?本気なのか?と聞かれたらそこまではわからない。


今までかおるとあの女以外の誰かに、装身具を贈ったことない。

かおる以外の他の女にセックス以外の何かを求めたり、

何かをしてやりたいと思ったことはなかった…

女は嫌悪する存在で、欲しいものを奪う対象でしかなかった。


今年の研修が何年振りかでこのホテルだと知った時、即彼女を推薦した。

仕事を頑張っている彼女を上司として後押ししてやりたかった。

もちろんそれだけではなかったが…

子ども達を誰かに預けて、俺と定期的に一夜を過ごせる環境があるなら…

泊りがけの研修にも仕事なら参加できるだろうと。


でもその研修の詳細の紙を手に、衝動的に上司の部屋に乗り込んだ行動に…

俺自身が戸惑った。
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