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そのキスの代償は……
第8章 その夜
この感情がなんなのか…

俺はその答えを言葉にすることを無理やり諦めていた。


でもはっきりしていることは、この感情に流され…

しばらく浸ることが許されたとしても、

いずれ時期が経ったら、俺は彼女のいる土地から去らなければならない。

そして、なにより触れることさえ不快であっても

俺はあの女と別れることはできない…

そのことは紛れもない事実で真実だった。


だからこそ、時に夜を共に過ごす…

それ以外何もはっきりさせずに、

あやふやな関係を続け、気持ちの赴くままに行動した。

ばれない程度でなら…

スリルを楽しむのもいいだろう。

それくらいが丁度いいと思っていた…

お互いにその方がいい。


大事になんてできないとしても…

だからってこんな最悪の形で晒し者にするつもりなんて、なかった。


今は…

震える背中を抱きしめることさえできない。

抱きしめて、連れ込んで抱き潰したいと思ったとき

いつもなら浮かばないあの女の顔が脳裏をよぎった。


ほくそ笑んで迫ってくる雌のあの女の淫靡な顔が…

どうせあの女は今夜くる。

いつになるかはわからないが、絶対に今夜この部屋に直接乗り込んでくる。

だからさっき断腸の想いで、彼女を隣の部屋に押し込んだのだから…
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