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そのキスの代償は……
第8章 その夜
この頃彼女を抱くようになって…

俺自身の彼女に抱く感情に揺らぎを感じるようになったころから、

それは月に1度の事のはずなのに、彼女の纏う空気が、

より艶っぽくなった気がする。


以前からしっとりと闇を孕むその佇まいに、色気が含まれるようになると、

彼女は制服を着て何気なくいつものように仕事をしているだけなのに、

その横顔に…

仕草に…

そのパソコンを触る指先にドキッとすることがある。


ちらちらと盗み見るその姿に…

艶やかさを感じてしまう。


それは、俺だけの勘違いではないようで…

周りの男共が彼女の姿に俺と同じ感情を感じているのを、

時たま目にすることがある。

はっとして固まる姿や、舐めるような熱い視線を背中から送る様子に…

気が付くたびに、煮えたぎるような熱い思いが込み上げてくる。


だから一夜で…

飛び込んできたその晩に…

終わりにすればよかっただろう?


こうなるのは…

わかっていたはずだ。

だから踏み込まないようにしていたはずなのに…

かおるに似ているという事実だけでも、

俺の理性はなんのあてにならないことなんて、

わかっていたはずだろう…
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