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そのキスの代償は……
第8章 その夜
「挿れてやろうか?」

腕の中の躰が強張った。

「…欲しいんだろ?」

びくつく躰を捕えたまま、熱を帯びた下肢を

柔らかい尻のすぐそばまで添わせる…

「このまま立ち姿で後ろからするのも…」

言葉を継ぎながら腰をそっと押し出して卑猥な円を描くように擦り付け

「獣みたいに刺激的でいいか?」

このままここで、ヤッてしまおうか?


彼女以外ほとんど来ない場所とはいえ…

それでもここは誰でも入ってこれる。

こんな毒を含んで綻ぶ艶やかな姿態をこの目で見るのは

俺だけでいいのだから…

口先だけでからかってみる。


ただドアに背中さえ向けていれば、多少の事は誤魔化す自信はある…

そんな俺を挑発するかのように

腕の中で見上げる瞳に、毒を含む色が濃くなってきた。

ああ、スイッチが入ったのだろう…


「なんて目で見るんだ?月曜の朝からそんなモノを垂れ流したまま

会社をうろついて…

煽って俺を喰い殺すつもりか?」


この得も言われぬ瞳で射抜かれると、

ただヤッてしまいたくなる衝動に囚われてしまう。

でもその願いが叶うわけもなく…

押さえつけているストレスの何万分の1かでも

彼女にぶつけるしかなかった。
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