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そのキスの代償は……
第8章 その夜
「こんなところで…

そんな目をするな。そんな色気を出すな。

お前は…

お前の躰は…

俺だけのモノなんだろう?」

乱暴に隙間なく抱き寄せ、ますます薫り立つうなじを

わざと大きな口を開け、歯を立ててがぶりと甘噛みした。


そう、ここだけじゃない。爪の先まで…

躰だけでなく、その放つ毒を孕んだ色気まで全て喰らい尽くしたい。

この艶めく全てを俺のモノにしたい…


愚かなほどの溺れっぷりに、

噛みつく口を少しだけ離して、自嘲気味に微笑むしかなくなった。

愚かなことはもう今更だろう…

どこまで堕ちるのか…

このオンナとならどこまで堕ちられるのか…

試してみればいい。


その歪んだ唇が今度はうなじを下り、回り込みながら鎖骨へ…

肩先へ…

彷徨う。


躰を強張らせ快感に悶えながら、抵抗をやめた姿態を腹に回し、

片手で支えながら、右の掌がぞわぞわと躰を這いまわる。

それでも直接快感を与えるようなところだけわざと避け、躰を煽りながら…

あちこちに焼印を当て撫でる。


そうすることしか、できない自分をあざ笑いながら

小部屋に充満する色気を…

喰らえる限り喰らい尽くした。


今はとりあえずそれで満足するしか術はない。
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