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そのキスの代償は……
第9章 その躰
シャワーを浴び終えてから…

彷徨うように何も身に着けず裸のままベッドに入った。


腫れた目のままでも…

素肌に当たるリネンの肌触りはとても心地よかった。

その感触を目を閉じ全身に感じながら…

心は黒い澱みに向かい、真っ逆さまに堕ちていく。

こんなことくらいでさっき抉られささくれ立った気持ちが

和むわけがなかった。


瞼をおろして、そこに横たわってはみたものの…

深い眠りには堕ちきることができない。

寝たのか寝ていないのか…

わからないような浅い眠りと覚醒を行ったり来たりする。


せっかくまどろみ、そのまま堕ちてしまいたいと願うと…

決まってさっき見せ付けられた…

ドギツイ赤の口紅がニヒルに微笑む口元を突きつけられ目覚める。


そんな身も心も休まらないようなうんざりすることを何度も繰り返し、

もうこれ以上は無理と諦めて起き上がると、

カーテンの外は白み始めていた…

床に転がっていた携帯のランプが点滅していることに気が付く。

こんな時間にメール?


見るのもだるくて億劫だったが、もしや母からかと思うと

色々なことが気になり始め、仕方がなくベッドを降りて、

携帯に手を伸ばした。
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