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そのキスの代償は……
第9章 その躰
最初のたった5文字の単語を見たところで…

一瞬にして読みたくなくなる。気分が悪い。

誰が、こんなものを…

私は目を見開きあの人の顔を見た。


私にこんなものを見せるなんて…

それなのに、先ほどと変わらない笑みを私に向けるあの人が…

益々わからなくなる。


「こんなもの!!」

私は衝動的に立ち上がって、込み上げた怒りのままに

その紙をあの人に向かって投げつけた。


白い紙が、勢いなく宙に舞い、それからひらひらとあの人の横に落ちる。

両手のこぶしを握り締め、憤りで躰が震える。

いったいどこまで馬鹿にしたら気が済むの?


この夫婦の考えていることは…

この夫婦のやっていることが…

この夫婦の関係そのものが…

私には全く理解できなかった。


何がどうしたらこんなものが書けるんだろう…

そしてこんなものをあの笑顔で手渡せるんだろう…


「すまない…」

あの人の表情が突然曇り、俯く。私は頭を横に振った。

そんな言葉を聞きたいんじゃない…

そんな顔をさせたいんじゃない…

その寂しげな姿を見ると、今度は一気に切なさがこみあげてきて…

ソファーに躰を投げ出した。
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