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そのキスの代償は……
第9章 その躰
そのまま後ろに回り込まれ、片手で口を塞がれたまま、

気が付けが両腕を後ろ手に拘束されてしまう。

背後に感じるあの人の香りに鼻腔から徐々に躰を侵される。

突然後ろから押されて…

前に前に足が出始めた。


その行きつく先は…

やっぱりベッドで、私はそのまま前のめりで寝具の海に身を投げ出した。


戒めを解かれ、上質な柔らかい生地に頬を擦りつけながら、

心と躰が散り散りに乱れる…

本当ならここで昨夜は淫蕩の限りを尽くしたのだろうか?

それもこんなことにならなければの話。


あれだけ泣いて、切り替えて、覚悟を決めて訪れたはずの部屋。

それなのになぜ私はこんなところにいるのだろう…

ここまで執着して離さないとあの人に思わせるものは何なんだろう?


うつぶせの私の腕を乱暴に掴んで仰向けにしながら、

あの人が馬乗りに跨る。

その瞳が怖くて見られない私の頬を、そっとひと撫でしてから、

両方の掌で優しく包んた。


胸のあたりから湧き上がるゾワゾワとする感覚。

躰がそれっぽっちの愛撫にすら疼いて反応を始めている…

硬く目を閉じ、何かを堪えながらその感覚が遠くに去るのを

ただひたすらに待つ。
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