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そのキスの代償は……
第9章 その躰
本当に…

この躰はどこまで愚かなのだろう…

何より愚かなのは何が起こるかわかりながらも、

この部屋に自ら足を踏み入れた私自身。


いつの間にか、首を包まれ…

じわじわとその掌に力がこもった。

圧迫される首元に違和感をもちつつ、

いつもなら何気なくしていた呼吸が徐々に制限されて…


まさか…

意識が遠のいていく中、このまま殺められるの?

と底知れない恐怖に戦く。


でも今更できることはなくて…

視界を遮断し躰の力を抜いて、全てをあの人に委ねなすがままになる。


従わない私がそこまで憎いなら、もうどうすることもできない…

心残りはたくさんある。

あの子たちは一体これからどうなるのだろう…

母親がこんな形で命を絶つなんて、想像もつかないだろうに…


火遊びに飛び込んだとき、平穏無事な生活なんて諦めてはいたけど…

こんな滑稽な終わり方をするのが、私の運命なのか?


所詮私はか弱い女で…

どんなに頑張っても、躍起になっても勝てるはずもない。

そもそも何と闘っているのかもわからないまま。


次の瞬間命の戒めが解かれ、ビリビリという裂けるような音と

胸元に感じる衝撃。

何かがバラバラと散らばって…

目を見開くと勢いよく左右に引き裂かれたブラウスが見えた。
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