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そのキスの代償は……
第9章 その躰
あの人は晒された胸元にがっつくように顔を埋め
その肌の感触を貪欲に味わうように首を振る。
煙草とフレグランスの混じった、ちょっと苦く感じるそれが
躰から匂い立つ。
それから胸を噛みつくように何度か啄んで、顔を少し上げる。
細い目でそこに付けた痕をちらりと見てこちらを向き、
長い舌先で自分の唇を舐めた。
「この躰に直接聞いてやろう…」
いつものあの人の癖。右の眉が上がって…
上目使いのまま大きな口を開け、
覆いかぶさりながら唐突に肩へ噛みついた。
イタッ。
痛みを感じるのは、生きてる証拠…
酸素の足りない頭を回しながら、考えがそこに至る。
ウッ。
再び痛みを感じて視線を向けると、
目の前の男は自分を見ろと言わんばかりに歯を立てたまま口角を上げた。
本当にこの人は…
ため息が零れる。
さっきはもうだめだと思ったけど…
やっぱりまだ…
まだ、私は…
死にたくはない。死ねない。
何の前触れもなく、瞳から涙が一筋零れ落ちた。
何があっても生き延びて…
あの子たちの元に帰らなくては…
そのためにできることは…
なんなのか。
でも私は今、文字通りまな板の上の鯉。
噛み痕に、ねっとりとした舌が執拗に這う。
あの人の熱を躰に感じながら、
それでも私は、どうやってここから生き延びるか…
それだけを考え続けていた。
その肌の感触を貪欲に味わうように首を振る。
煙草とフレグランスの混じった、ちょっと苦く感じるそれが
躰から匂い立つ。
それから胸を噛みつくように何度か啄んで、顔を少し上げる。
細い目でそこに付けた痕をちらりと見てこちらを向き、
長い舌先で自分の唇を舐めた。
「この躰に直接聞いてやろう…」
いつものあの人の癖。右の眉が上がって…
上目使いのまま大きな口を開け、
覆いかぶさりながら唐突に肩へ噛みついた。
イタッ。
痛みを感じるのは、生きてる証拠…
酸素の足りない頭を回しながら、考えがそこに至る。
ウッ。
再び痛みを感じて視線を向けると、
目の前の男は自分を見ろと言わんばかりに歯を立てたまま口角を上げた。
本当にこの人は…
ため息が零れる。
さっきはもうだめだと思ったけど…
やっぱりまだ…
まだ、私は…
死にたくはない。死ねない。
何の前触れもなく、瞳から涙が一筋零れ落ちた。
何があっても生き延びて…
あの子たちの元に帰らなくては…
そのためにできることは…
なんなのか。
でも私は今、文字通りまな板の上の鯉。
噛み痕に、ねっとりとした舌が執拗に這う。
あの人の熱を躰に感じながら、
それでも私は、どうやってここから生き延びるか…
それだけを考え続けていた。