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そのキスの代償は……
第11章 その朝
「イッてしま…」

あの人の低い声が、途中で途切れた。

耳すら聞こえないほどの快楽に…

五感全てが呑み込まれ、爪先を逸らし、

躰がこれでもかという位、弓なりなりながら、

毛穴が開き、一気に汗が噴き出す。

躰中の細胞が…

全ての感覚が…

ゆらゆらと漂うような…

これまでに感じたことのない淫靡な世界に…

ただキモチイイコトのみに支配される。


ああ、私はコレが欲しいだけのために、

ただソレだけのために…

全てを…

何もかも捨ててしまったのだ…

そのまま白む世界に真っ逆さまに堕ちていった…


次にふわっと覚醒したとき、私はソファーではなくベッドに眠っていた。

心地いい熱に抱き寄せられ、目覚めてあの人がいる感覚に

微笑みながら微睡んでいると、

「かおるぅ…

お願いだからどこにも行かないでくれ。

もう俺を独りにしないでくれ…」

何かを懐かしむように薄目を開けたように見えたあの人が

再び瞼を下してそっとこちらに顔を近づけてきて頬ずりし…

脱力した。


囁かれる言の葉が、漂っていた意識の中で…

突然グサリと心に大きな棘を突き立てる。

そのままいつのまにか意識の淵から落ちていて…

私たちは1時間ほど一緒に眠った。
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