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そのキスの代償は……
第11章 その朝
研修は何事もなかったように終わり…

全てはあの人の思惑通りになった。


それは私にとって屈辱以外の何物でもなくて…

それでも私は、もう従うしかなかった。


目覚めてすぐ、器用にシーツ1枚を身に纏わされ、

抱き上げられてたかと思うと…

歩く先にあるソファーにふわっと降ろされた。

それからあの人は私の隣に腰を下ろし、白い紙をテーブルに広げ、

さっき持っていたあのペンを…

差し出す。


さっきさんざん弄ばれたそのペンで、これにサインしろというのだろうか?

『書く』と勢いで言っただけだと、はぐらかせばいいものを…

困惑の顔で見上げる私に…

最高の笑みを返してきた。


この人は、律義に自分の言ったことを遂行してしまうこの性格を、

わかってわざとこんなことを…

顔を伏せ、両手を膝の上で握り締める。

あの人を呪っても、自分の言葉がなくなるわけではない。

私はため息を吐き出してから、躰を前かがみにして紙を拾い上げた。


目に飛び込むのは『愛人契約書』という、何度見ても気分の悪くなる単語。

どこまでこの果てない屈辱が続くのか…

私は、その文字の羅列に適当に目を通すふりをした。

斜めに読みながら、頭に内容はほとんど入ってこない…

ただ、その契約書に終結の期日は書かれていなかった。
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