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そのキスの代償は……
第11章 その朝
週が明けて…

私は脅えながら出勤し、いつものように仕事をこなす。

一週間過ぎても、2週間が過ぎても…

あの人はいつもと変わりなく…

私が上司に呼び出されることもなかった。


それでも…

急にあの人と二人だけでいることが怖くなった。

会社では、意識して二人きりにならないように…

気を付けた。

別に関係を秘密にするなんて約束はどこにもない。

契約したのは愛人としての関係だけ…


小さな物音に吃驚し、何気ないことに脅えてしまって…

仕事に集中することが大変だった。

私はなんでこんなことになってしまったのだろう?


そして時間だけは経過していき…

翌月の飲み会が近づくにつれて…

自分がこれから一体どうなっていくのか…

不安が高まった。


もう二度とあんな風には会わない。メールも返信しない。

そうすれば…

もうこんなことから逃れられる…

終われると思っていた。


でもその決心はそんなふうに私の気持ちだけ取り残された時間の流れに…

私以外何も変わらない日常を過ごしていくにつれ…

段々と薄れていった。


そう、躰はあの人を今でも求めている。

会わなければそれでも我慢できるかもしれないけど…

毎日同じ会社に出勤していて、いつも視線の先に…

あの人はいる。

その後ろ姿に…

電話を持つその指先に…

惑わされた。

硬く閉ざした心と躰は徐々に開かれ…

決心を鈍らせていく。
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