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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
次の逢瀬の日。

二人がホテルで落ちあうその前は、やはり会社の飲み会だった。

私はいつもと変わりなく末席に座り、いつもと同じように

色々と気を配ることを求められていたが…

今夜はいつもの飲み会の時より、ハイペースで酒をあおった。

あまり赤くならない私の頬が少しは染まる位に呑んだ。

火照った躰が心地良く、意識がなくなったわけでも、

気を配れないほど泥酔したわけでもなかったが…

いつもよりは酒に呑まれていた。


そんな時、珍しく後輩が声をかけてきた…

湊(みなと)君は今年入社の新人。

「相良さん、いい感じで出来上がってます?隣いいですか?」

「ええ」

別に一緒に酒を飲むだけだろうと腰を浮かして横に場所を作る。

彼は静かに腰を下ろして…

こちらに向かって顔を上げると、妖艶に微笑んだ。


ハッとして怖くなる…

その妖しげな笑みが、あの人の時折見せる表情と重なり、

ちらっとあの人の方を見て視線が合う間もなく、

急に吐き気が襲ってきた。

目を見開き口元を掌で隠して、込み上げるモノを押し込みながら

「湊君、ちょっとごめんなさいね…」

詫びだけをして足早にその場を立ち去る。

トイレに駆け込み、個室のカギを閉めたとたん、

胃の中のモノが吐き出された…


それから生理的な涙を堪えながら便器を抱え、何度か戻した。
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