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そのキスの代償は……
第12章 その後の二人
「ひなは耳、弱いだろ?」

シーツの海に大切に降ろされながら、耳元でそっと囁かれる。

その吐息がくすぐったくて、物知りな躰が悦びに震えた。

さっき噛まれた甘い痛みが残る中、

重ねるように与えられるくすぐるようなむず痒い感覚。

相反する刺激のはずなのに、それにも応えてしまう躰…


もう何も考えたくない…

この掌にひとたび捉えられたら、強引で刻み付けるように

与えられる快楽に酔い、淫らに狂ってただ啼き喚き続けたい…

目を閉じ震えの残る火照った躰のまま、私はその次の愛撫を待ち、

無抵抗を示すように両手を頭の上に組んだ。

空気はピンと張りつめ、熱を帯び、お互いの息遣いだけが

その静寂の根底を震わせる。


自然と耳に神経が集中すると、あの人が身じろぎする音が流れてきた。

服の衣擦れの音…

ベルトを緩める金属音が響いて…

ズボンがベルトと共に床に落ちる。

それに続いて…

足音が近づいてきた。

いよいよと思い躰を強張らせ、次の快感を期待しながら

胸も躰も震わせていても…

いつまでたっても何も起きない。


私は目を開き、マットレスに沈み込んだ躰を少し起こして

さっき物音のしたあの人のいる方へ向いた。
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