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第2章 その想い

やけになって何もかも捨てようとしたが…

そこまでの勇気もなかった。

なりふり構わず、探すほどの余裕もなかった。

でもそれは言い訳なのかもしれない…

結局何も言わずに、勝手に俺を捨てて出て行ったカノジョを

自分から血眼になって探すのはプライドが許さなかった…


それに仕事をしなければ、生きていけない。

貧しいことの辛さを…

もう二度と味わいたくなかった。

それから俺はただ仕事だけに没頭してその他の事を忘れた。


そんなタイミングの中、何の因果か政略結婚をした。

逆玉の輿。

俺の仕事はこんな部分でも評価されたのか…

望んでもないのに白羽の矢が立ち、

重役のお嬢様の子守りをすることになった。

カノジョじゃなければもう、誰でもよかった。

しかしそのお嬢様はあまりにもわがままで、

その常識感覚は俺の想像をはるかに超えていて、うまくいかなかった。


俺は後悔して、やっとカノジョを探し始めたが…

そんなに時間が経ってから見つかるはずもなかった。


そして、悪い癖がまた始まった。

仕事はしたが、ぽっかり空いた心の隙間は仕事だけでは埋められず、

夜毎に女を乗り換える。

そんなスリルを…

遊びにしか…

快感を見いだせなくなった。

転勤でそんな関係も全部切って、身も心もきれいになった時、

俺はひなに偶然出会った。