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そのキスの代償は……
第14章 そのひと時
もう一度文字を見つめると、

今度はなんとか認知できるようになってきた。

ゆっくりと読み進めるにしたがって、緊迫感が増していく。

これってもしかして…

ある程度内容が頭に入ってくるとペースを上げ、脳みそがフル回転し、

私に直接持ってきた意図が分かった時、思わずあの人の瞳を探した。


「これ…」

「頼む」

それだけ言うとあの人はそのまま部屋を出て行った。


緊急ではないけど…

でも今目の前の書類を最後までしているほどの余裕はなさそう。

持ち込まれたFAXのせいで…

スケジュールが狂った。


さっきまで完成させるつもりだった書類を、

切りのいいところまで一心不乱に打ち込んで仕上げる。

気が付けば…

昼休み。

でも休む余裕のない私は、持ってきたお弁当を5分で食べ、

お手洗いにだけ行くとパソコンの前に戻った。


これがいつも変わらない私たちの仕事の流儀。

不必要な会話はほとんど必要なく、

お互いが仕事に関しては最低限で分かり合える間柄だ。

相手先との打合せに同席し、メモで指示をされて必要な書類を作成する。

私自身も自分がメインですることを許されている仕事も持っているが、

あの人の抱える案件は何せ規模が大きい。

だから一人でできることには限界があって…

資料集めや書類を整えるにも補佐が必要だった。
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