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そのキスの代償は……
第14章 そのひと時
お金は必要なもの。

お金はあっても困らない。

それは別に犯罪を犯して手に入れたお金じゃない…

でも胸を張って表に出せるようなものでもない。

それでもお金がなくなってしまえば、

明日どころか今夜食べるモノにも事欠いてしまう。

誰しも全ての事に清く正しく美しくなんて生きてないし、生きられない。


貧しいことは…

お金がないことは…

人としての感情を…

理性を…

良心を…

段々と崩壊させてしまう。

私が私じゃなくなってしまう。


そのお金がどんなお金であっても、

レジで支払いをすればお金であることには変わりないのに…

そんなことはわかっていても、何かが私の心に引っ掛かる。

チクチクと痛み、躊躇してしまう。


それまでは私の躰に、心に何かを残すような関係だったのに…

でも今は会った証拠にお金が残るような関係に変わった。

考えないように努めて意識しても、その封筒を見ると…

その封筒を思い出してしまうと…

どうしても思考がそちらに向かって引き戻されてしまう。

考えないと決めたはずなのに、考え込んでしまう。

そして必ず自分の不道徳を責め、不条理で理不尽な世の中の呪ってしまう。


どうして…

どうしてなの?

どうして私が、私だけがこんな目に合うのだろうかと…
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