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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
7月。お互い間の開いた逢瀬…

彼女がシャワーから戻ってきた。

今日はどうしても告げなければならないことがある。

俺は歩いてきた彼女に向かって一枚の紙を差し出す。


「なに?」

彼女は俺がまだいる事実に驚きながら、

人差し指と中指でその紙を器用に挟み取り目の高さに持っていき開く。

その色っぽいしぐさに…

目を細めた。

やっぱり…

いい女だ。


「冬?」

「ああ。もう5年になるからな…」

「私達は2年。そろそろ潮時なんでしょうね。

恋愛感情って2年が賞味期限っていうし…」

そう言いながら紙を返してきた。とうとうきた内示。

もうじきこの土地から…

彼女から…

離れなければならない。


「躰にだって感情はあるからね」

彼女らしい切り返し。確かに、彼女の躰は…

極上だ。

最初は、しばらく関係を持ったら切ろうと思っていた。

ややこしいことは嫌いだ。

つまみ食い程度で留めておけば火遊びで済む。

欲望のはけ口は必要でも、感情は…

いらない。


今までだって、火遊びはそれなりに楽しんできた。

俺は妻だけに操を立てるようなそんなつまらない男じゃない。

だから、それくらいの取るに足らない事で俺たち夫婦は今更壊れない。

お互いが寂しい大人の男と女。数回の情事。

今までもそれで終わっていたのだから…

今回もおしまいのはずだった。
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