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そのキスの代償は……
第15章 エピローグ
17時を知らせるチャイムが鳴った。

デスクの上の封筒を持ち、そこに書かれた自分の名前をじっと見つめ

人差し指ですっとなぞってから鞄に押し込む。

そのかばんを手にしてから

「お先に失礼します」

同僚にいつものように挨拶をして今日も職場を後にした。


少し歩いたところにある駐車場の自分の車に乗り込む。

今日もやっと…

仕事が終わった。

シートに座りほっと一息ついてから、私はそっと腹部を撫でた。


不安と幸福感。果たしてどらがが大きいのだろう?

おそらく現実はどこまでも、どこまでも残酷だ。

私は今までそう言う事しか…

経験していない。

だから私に限ってはそんな幸運な事は度々は起きないと、

どこかで諦めている。

それでも彼は信じてくれている。

疑いのない瞳で、私を見つめてくれている。


もし、彼に拒絶されたら…

生きていけない。

何があっても一緒にと口では言っていても、

その時が来たら…

その事実を目の当りにしたら…

そう思うと怖い。


私は今まであまりにもうまくいかないことの方が多く、

裏切られ過ぎている。

男という生き物を信じられない事実を多く突きつけられてきた。

それでも、それなりに変化していく周りと自分を

辛酸を舐めるように受け入れられたからこそ…

今がある。
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